コラム「伸縮自在」
 第7回

「中欧プラハの空の下から」

     音楽の街で想うこと(その1)

 私は4月中旬から,中欧チェコ・プラハに来ています。これまで「東側」と呼ばれ,「東欧」と思われているようですが,地理的にはどう見てもヨーロッパのちょうど真ん中,ここプラハは「西側」のウィーンよりもさらに西に位置しております。人々はウィーンを音楽の都と呼びますが,ここも負けず劣らずのレベルです。有名な国民歌劇場 Narodoni Divadro では,スメタナ,ドヴォルジャーク,ヤナーチェク,マルティヌーといったチェコ人のオペラを中心として,また国立劇場ではむしろドイツものやフランスものを中心として毎日のように公演が行われています。スーパースターはあまり来ないものの,レベルとしてはウィーンと肩を並べると言われています。またチェコ・フィル,プラハ響,プラハ放送響をはじめとする数々のオケがあることでも知られています。多くの方から,今やっている連続テレビ小説の主題曲がチェコ・フィルの演奏だと知らせていただきました。

 こうした大きな,有名なものだけでなく,街中にコンサートがあふれています。ピアノ連弾,弦楽四重奏,オルガンとラッパと歌,というように小さいサイズのコンサートが,街中にある教会や博物館で毎日4つも5つも行われています。だいたい1時間程度のものが多く,街中にあふれている観光客も容易に楽しむことができます。先般,こうしたものの一つに行ってきました。7人の弦楽合奏+トランペット,曲目は Vivaldi「四季」より,Handel「水上の音楽より」,Telemanトランペット協奏曲,Mozart Little night Music (何じゃこれは)というようなものでした。こうしたコンサートは,お客さんの入りを考えてこうした名曲コンサートになるケースが多いようですが,その演奏レベルはさすがはヨーロッパの音楽学院と言われるだけのことはあると思いました。おもしろいのは,聴く側も,ちょうど大阪の人が吉本新喜劇をちょっとのぞきに行ってみようか,と行くぐらいの感じで,ふらっと来ることです。オペラに行ってみてもそういう感覚があります。日本のように,身構えて・・・というのとは全く違うのです。

 そこで想ったこと,この街は全般的にそうなのですが,昼間,街の中心部を歩いている年配の人が多い。つえを突いた人,犬を連れた人,色々な人が,地下鉄にもトラムにもバスにも繁華街にも,とにかくたくさんいるのです。そしてそういった人たちが夜のコンサートにもたくさんやってきます。実はこの街は人形劇の街としてもとても有名で,その劇場にもたくさん人が来ます。もちろん,居眠りをしに来る人もありますが,映画館で居眠りする人がいることを思えば納得できるでしょう。こうしたことは非常にいいことだと思います。確かに道路の舗装はひどい。犬のフンもあちこちに落ちている。スリや詐欺は当たり前。何年も使われずに放って置かれたお化け屋敷みたいな建物もたくさんある。「右や左のだんなさま」という人もたくさんいる。でも街には人があふれ,活気があるのです。倉敷の3倍,岡山の2倍の人口ですが街の活気は5倍,10倍だと思います。
 我々倉管も,演奏する側は一生懸命やりますが,お客さんにはふらっと来てもらえるように,今日は倉管だからちょっとのぞいてみようか,と親しまれるようになりたいものですね。(Sobu)


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